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Japanische Klassiker mit Furigana

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むげつものがたり

無月物語

久生 十蘭

Lesen Sie 無月物語 (むげつものがたり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.485 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

忠文としては、それはそれなりに一応の働きをしたつもりだったので、大納言実頼の差出口で恩賞が沙汰やみになったことを遺恨に思い、臨終の床で、

「おのれ、実頼」

などと言わでもの怨みをいう、あきらめの悪い死にかたをしたが、忠文が死ぬとすぐ、実頼の息子や娘がつぎつぎに変死するという怪事がおこった。

平安時代は、竜や、狐狸の妖異や、鳥の面をした異形の鬼魅、外法頭とか、青女とか、怪物が横行濶歩する天狗魔道界の全盛時代で、極端に冥罰や恠異を恐れたので、それやこそ、忠文の死霊の祟りだということになった。以来、忠文を悪霊とか悪霊民部卿とかと呼び、忠文の血族を天狗魔道の一味のように気味悪がり、泰文の異常な数理の才を天狗の助けかのように評判した。

泰文はこれも面白いと思ったのか、どこかの家で慶事があると、かならず出掛けて行って中門口に立ちはだかり、

「悪霊民部卿、参上」

と無類の大音声で見参する。稚気をおびた嫌がらせにすぎないが、輿入れや息子の袴着祝などにやられると災難で、大祓ぐらいでは追いつかないことになる。

泰文は中古の藤原氏の勇武をいまに示すかのような豪宕な風貌をもち、声の大きいので音声大蔵といわれていたが、全体の印象は薄気味悪いもので、逢魔ヶ時のさびしい辻などでは逢いたくないなにともつかぬ鬼気を身につけていた。