Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
「どうじゃな、刀を引いたほうが利口らしいの。」
そう出羽守が、口を歪めて言った時だった。
不思議なことが起ったのである。
夕方に近いとは言え、暖かい小春日和で、今日も日本橋の袂など、ああして人が出盛ったくらい、冬にしては暖かな強い日光が、まだ戸外にきらめいているのだ。
ことに西陽を受けて、この伝馬町あたりは、かっと瓦が燃え立つような茜色の空。
縁の障子が開けられ、すぐ外は中庭を隔てて、向うの部屋になっているのだが――。
この瞬間である。
千浪の上から首に刀を擬していた祖父江出羽守が、あっと小さく叫んだと思うと、片手を頭巾の眼へやって、いかにもまぶしそう。刀を片手に、一瞬間、ちょっとその緊張した姿勢が乱れた。
背を伸ばして、自然、刀の斬尖は千浪の咽喉首から、一尺も上へ上がったのだ。
この不意の出来ごとに、虚を衝くことも忘れて、大次郎と佐吉は、驚きの眼を合わせて立っている。
眼つぶし鏡
一条の光線が、その出羽守の眼を射たので。というのは、ちょうどその中庭を隔てた向う側の二階の部屋から、障子を細目に開けた番頭の与助が、手鏡に陽をかざして、その照り返しを巧みに出羽守の眼へ当てたのだった。