Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
」
お多喜は、ぎょっとして飛び退さった。
女は、お多喜の顔とは別の方角へ、おろおろと落ちつかない眼を据えて、
「あれ、あれ! 蝶々が二つも! 女蝶男蝶! ほほほほほ――。」
白い脛も露わに、よろよろと歩きだしてくる。さながら蝶を追うような舞いの手ぶりよろしく。
保名狂乱――ではないが、女は、無残に狂っているのである。
人品、言葉つきも卑しくなく、相当の生活をした女に相違ないが、いくらか、これにはよほど深い事情がなくてはかなわぬとはいえ、なんという気の毒な――と、お多喜は、しばし宗七のことを忘れて、その狂女のありさまを打ち守るのであった。
銀磨きお預り十手
お参りに行って会ったのだから、これを助けるようにという神様のお示しであろうと、お多喜は、嫌がる女を伴れて、早々に櫓下の自宅へ帰って来た。
格子をあけると、狭い土間の取っつきに、夏なので障子をとり払い、すだれが二枚、双幅のように掛かっている。
宗七と二人きりの、小さな家で、雇人を置く生計でも、身分でもない。
「さあ、あなた、ずっとお上り下さいまし。ずっとと申しても、この一部屋なんですけれど。」