Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
お顔がああ変ってからというものは、事ごとに自分に辛く当って、まるで別人のように忌わしい気立てになった大次郎ではあったけれど、あれは果して良人の本心だったろうかと、今にして千浪は、疑わざるを得ないのだった。
こう醜くなった自分に、良人として生涯仕えなければならないと努めている千浪を、いじらしく思って――千浪を自分から解放するために、ああ心にもない乱暴な言動をつづけて来て、あげくの果てに飛び出してしまわれたのではなかろうか。
つまり、千浪を愛すればこそ、千浪の一生を救うために、あの愛想づかしの末が家出ということになったに相違ないと、大次郎の出奔後、千浪は千々に思いを砕いた後、思いきって、こうして毎日江戸の町じゅうを、大次郎の影を求めて彷徨い歩いて来たのであった。
千浪ゆえに荒んだ心になって、道場を棄てて巷へ出て行った良人――会って、縋って、泣いて頼んで、もとどおり練塀小路へ帰ってもらおう。
是が非でも、そうしなければ、死くなった父上さま法外にも申訳がない。
そう思って。
と言うのは、この千浪、初恋の優しかった大次郎のおもかげを、夢に現に、忘れ得ないのだった。