Japanische Klassiker mit Furigana
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もゆるほお
燃ゆる頬・聖家族
堀 辰雄
Lesen Sie 燃ゆる頬・聖家族 (もゆるほお) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.309 Zeichen · 144 Bildschirme
「隠さなくてもいいじゃないか?」
「これは何でもないんだ」
「ちゃんと知ってるよ」
「何をさ」
「一昨日、いいところを見ちゃったから」
「一昨日だって? なんだ、あれか」
「だから今日は君が奢るんだよ」
「あれは、君、そんなもんじゃないよ」
あれはただ浅間山の麓まで自動車で彼女たちのお供をしただけだ。「たったそれだけ」だったのだ。――彼は再びその時の夫人の言葉を思い出した。そしてひとりで顔を赧くした。
それから彼等は食堂へはいって行った。それを機会に彼は話題を換えようとした。
「ときに君の絵はどうしたい?」
「僕の絵? あれはあのままだ」
「惜しいじゃないか?」
「どうも仕方がないんだ。ここは風景は上等だが、描きにくくて困るね。去年も僕は描きに来たんだが駄目さ。空気があんまり良すぎるんだね。どんなに遠くの木の葉でも、一枚一枚はっきり見えてしまうんだ。それでどうにもならなくなるんだよ」
「ふん、そんなものかね……」
彼はスウプを匙ですくいながら、思わずその手を休めて、自分自身のことを考えた。ことによると、自分と彼女との関係がちっとも思うように進行しないのは、ひとつはここの空気があんまり良すぎて、どんなに小さな心理までも互にはっきり見えてしまうからかも知れない。