Japanische Klassiker mit Furigana
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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
Lesen Sie 爆薬の花籠 (ばくやくのはなかご) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.908 Zeichen · 204 Bildschirme
房枝は、いくたびか、通りがかりのその棟割長屋へ、
(お母さま、ただ今)
と、はいっていきたくなって、困った。まだ見ぬ親をしたう房枝の心のうちは、ちょっと文字にものぼせられないほど、いじらしかった。
「さあ、地所は、あそこに見える空地なんだが」
と、黒川が、とつぜん立ちどまって、
「ところが、あの空地の持主の飯村という人の家は、どこか、この近所にあったはずだが、どこだったかなあ。だいぶん以前のことで、度忘れしてしまったぞ」
と、新団長は、溜息をついて、あたりを見まわした。房枝の夢みる心は、黒川のこえのした瞬間に破れ、とたんに彼女は、現実の世界に引きもどされた。
「さてこのあたりに、ちがいないと思うのだが、房枝、わしは、このへんをちょっと探してくるから、お前、しばらくここに待っていておくれ」
そういって、黒川は路傍に房枝をのこして、あたふたと向こうへ歩いていった。
工場地帯
房枝は、ひとりになって、路傍に立っていた。通りがかりのおかみさんや、三輪車にのった男や、それから、近所のいたずらざかりの子供たちが、房枝を、じろじろと見て通る。なにしろ、このへんに見なれない垢ぬけのした洋装をしている房枝だったから、特に目に立ったのであろう。