Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちやくもをかたる
父八雲を語る
稲垣 巌
Lesen Sie 父八雲を語る (ちちやくもをかたる) von 稲垣 巌 (いながきいわお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.383 Zeichen · 15 Bildschirme
と呼ぶのが例でした。いつも「オールライト スウイートボイズ」と大声で答へて、嬉しさうに、少し踊るやうな恰好で食堂に来るのでしたが、仕事に一生懸命の時は、返事もありません。返事はしてもその「オールライト」は気が抜けてゐます。こんな時には待てども待てども、来てくれません。母が又案内に行きます。そして食卓に座って待ってゐる子供等の前に漸く現はれるパパの顔は、いつもの顔とは全然違ひます。コワイコワイ顔です。あの世の夢を見つめてゐるやうな顔です。いつもは自分でパンを切って先づ子供達に一片づゝ笑顔で分けてくれます。又、大皿に積み上げたベーコンだとか、タングだとかも分けてくれますが、「コワイ顔」のパパは子供達には見向きもせず、何か独り言を言ったり、独合点をしたりして自分だけ急いで食べてゐます。ママが見かねて「あなた 少し 夢から 醒める、願ふです。小さい子供泣きます」といふと一時吾に返って「ごめん/\」と言ひますが、子供等にやるべきパンを切りながら又忘れて、自分で、食べるともなく食べてゐます。
然し書斎の仕事からすっかり解放された時のヘルンは実に春風駘蕩たる幸福感に満ちみちてゐました。