Japanische Klassiker mit Furigana
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ちち
父
矢田 津世子
Lesen Sie 父 (ちち) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.168 Zeichen · 38 Bildschirme
「それあ、母様およろこびでしょう」
云いながら紀久子はふと、さっきの姉の話を飯尾さんにきかせてやってもいいような気になった。母にもつ感情の近さを飯尾さんに感じたからである。いま、母の話が出たので紀久子は思いがけずそれに気付いた。何かしら、姉からきいた話を飯尾さんに告げ口してやりたいような甘えかかった気もちが心の中に動いている。早く早く、とそれが急き立てる。どうせ知れる話なんだから――こう思ったので、
「そうそう飯尾さんにお話しようと思っていたけど」
と切り出すと、火鉢へ屈んで煙草に火をつけていた飯尾さんは心もち緊張した面もちで眼をそばめるようにして紀久子を見あげた。その眼つきは母の癖であった。どういうものか、母が亡くなってから飯尾さんには母に似たものが出てきた。その立居、物腰ばかりではなく、以前はひっつめて後ろに小さく束ねていた髪もこの節では母のように前髪をとり髱を出してお品よく結っているのだった。それに、母の形見だという小粒の黒ダイヤのはまった指輪の手をたしなみ好く膝の上に重ねて少し俯向きかげんに人の話をきいている様子は母にそっくりであった。
「飯尾さん、ばかにめかしているじゃないか、親爺に気があるのとちがうか」