Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうなべ
牛鍋
Lesen Sie 牛鍋 (ぎゅうなべ) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.871 Zeichen · 4 Bildschirme
娘は箸を鍋から引かなくなった。
男のすばしこい箸が肉の一切れを口に運ぶ隙に、娘の箸は突然手近い肉の一切れを挟んで口に入れた。もうどの肉も好く煮えているのである。
少し煮え過ぎている位である。
男は鋭く切れた二皮目で、死んだ友達の一人娘の顔をちょいと見た。叱りはしないのである。
ただこれからは男のすばしこい箸が一層すばしこくなる。代りの生を鍋に運ぶ。運んでは反す。反しては食う。
しかし娘も黙って箸を動かす。驚の目は、ある目的に向って動く活動の目になって、それが暫らくも鍋を離れない。
大きな肉の切れは得られないでも、小さい切れは得られる。好く煮えたのは得られないでも、生煮えなのは得られる。肉は得られないでも、葱は得られる。
浅草公園に何とかいう、動物をいろいろ見せる処がある。名高い狒々のいた近辺に、母と子との猿を一しょに入れてある檻があって、その前には例の輪切にした薩摩芋が置いてある。見物がその芋を竿の尖に突き刺して檻の格子の前に出すと、猿の母と子との間に悲しい争奪が始まる。芋が来れば、母の乳房を銜んでいた子猿が、乳房を放して、珍らしい芋の方を取ろうとする。