Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

牛

坂口 安吾

Lesen Sie 牛 (うし) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.971 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

女はそれに勢を得たのか、益々せッせと無言でキャラメルを押しこんだ。彼が二十かぞえたとき、女が溜息をもらしたので、彼は女に悪くなった。

「君は食べたくないのか」

「…………」

「すこし返そうか」

「なぜ」

「二十そっくりもらうのは悪いよ」

「かぞえていたの?」

「君が欲しければ半分返すぜ」

「いいわよ」

「オレがここに居ること、どうして分った」

「村の人はみんな知ってるわ」

にがい思いがこみあげた。浮世の事情を知ることは甚だよろしくないのであった。

「もう、帰れよ。女が夜こんなところを独り歩きするのは良くないことだ」

「帰るわよ」

女は力のない返事をした。しかし、モジモジしているようであった。

「明日もキャラメル持ってきてあげるわ」

「もういいよ」

「手紙よんだ?」

「よんだ」

「おやすみ」

懐中電燈の灯がよろけながらだんだん遠のいて見えなくなった。

しかし、翌る晩、女は現れなかった。彼は自分の態度がわるかったために、女を怒らせたに相違ないことを羞じた。

あの女は、親切だ。しかし、誰だろうかと考えた。

「オレが時々ここに閉じこもって暮していると、あの女が握り飯をはこんでくれる」

それは大いに可能性のありうることだった。