Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼたん
牡丹
宮本 百合子
Lesen Sie 牡丹 (ぼたん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.684 Zeichen · 26 Bildschirme
すると、女房が遽しく水口から覗いて、
「ちょいと! お前さん」
と変に熱心なおいでおいでをした。石川は、なお尻尾を振って彼の囲りを跳び廻る犬を、
「こらこら、さあもう行った、行った」
とあしらいながら、何気なく表の土間に入った。上り端の座布団に男女連れがかけていた。入って行った石川の方に振り向いた女の容貌や服装が、きわだって垢ぬけて贅沢に見えた。
「いらっしゃいまし」
せきが土間に立ったまま、
「事務所からきいておいでなすったんですってさ」
と云った。イムバネスを着た年配の紳士は、
「いそがしいところをお邪魔だろうが、一寸相談して見たいことがあったのでね」
と云った。石川は始めその男女を、世話されている者、している者という風な関係に思った。××町の家の女主でそういうのがよくあるのであった。ところが話しているうちに、女の方が今度新たな家を建てようとする人で、男はただ後見役の位置にいることが分った。四十がらみのその女は、
「ずっと下町にいるから当分淋しくって困るかも知れないと思いますけれど、私も伜も体が丈夫な方じゃないから、一つ思い切って閑静なとこへ引込んで呑気に暮そうと思いましてね」