Japanische Klassiker mit Furigana
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きつねび
狐火
豊島 与志雄
Lesen Sie 狐火 (きつねび) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.594 Zeichen · 11 Bildschirme
おや。
見とれた瞬間に、何か明るい晴々としたものが、ふいに彼の胸の中に飛びこんできた。彼はあっと眼と口とを打開いたまま、思わず提灯を取落してしまったが、それから先はもう覚えないで、狐火の方へ足を宙に駈け出してしまった。
真暗な中に取残された馬は、嘶きもせず慌てもせず、暫く其処に立っていたが、それからことりことり荷馬車を引いて、通い馴れた街道を自分の家の方へ、そぼ降る雨の中を帰っていった。
彼の家では、一番年上の十二になる子供が、表の戸がごとりごとり叩かれるのを聞きつけて、立っていって戸を開けると、にゅっと馬の頭がはいってきた。たしかに自分の家の馬で、荷馬車を引いて、雨に濡れてしおしおとした悲しげな眼付をしていた。
彼の姿は見えなかった。
家中の者が騒ぎ出した。やがて町の人達も騒ぎだした。噂は界隈に拡まった。がいつまでたっても、彼は戻って来なかった。それらしい姿を見かけた者もなかった。
のっぽの三公の消息は、それきり全く分らなかった。或る古老から聞いた通りに、この話を綴ってる私自身にも、勿論分りようはない。