Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
「もうちょうど一年ぐらい………いや、そうやないわ、あの時河鹿が啼いてたわ。」
「そうや、もう一年半になるで。」
それは二人が人目を忍ぶ仲になり出して間もない時分、或る日滝道の終点で落ち合い、神有電車で有馬へ行って、御所の坊の二階座敷で半日ばかり遊んで暮らしたことがあったが、涼しい渓川の音を聞きながら、ビールを飲んでは寝たり起きたりして過した、楽しかった夏の日のことを、二人ともはっきり思い出した。
「そしたら、又御所の坊の二階にしょうか。」
「夏より今の方がええで。紅葉見て、温泉に這入って、ゆっくり晩の御飯食べて、―――」
「そうしょう、そうしょう、もうそれにきめたわ。」
その明くる日は早お昼の予定であったが、福子は朝の九時頃からぽつぽつ身支度に取りかかりながら、
「あんた、汚い頭やなあ。」
と、鏡の中から庄造に云った。
「そうかも知れん、もう半月ほど床屋へ行けへんさかいにな。」
「そしたら大急ぎで行って来なはれ、今から三十分以内に。―――」
「そらえらいこッちゃ。」
「そんな頭してたら、わてよう一緒に歩かんわ。―――早うしなはれ!」
庄造は、女房が渡してくれた一円札を、左の手に持ってヒラヒラさせながら、自分の店から半丁程東にある床屋の前まで駈けて行ったが、いいあんばいに客が一人も来ていないので、