Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
「リリー」と大きな声で呼ぶ。帰って来る迄は何度でも、二階へ上ったり、裏口へ廻ったり、往来へ出たりして呼び立てる。今に帰るだろうから一杯飲んでいらっしゃいと、彼女がお銚子を取り上げても、モジモジしていて落ち着いてくれない。そう云う場合、彼の頭はリリーのことで一杯になっていて、女房がどう思うかなどと、ちょっとも考えてみないらしい。それにもう一つ愉快でないのは、寝る時にも割り込んで来ることである。庄造は今迄猫を三匹飼ったが、蚊帳をくぐることを知っているのはリリーだけだ、全くリリーは悧巧だと云う。成る程、見ていると、ぴったり頭を畳へ擦り付けて、するすると裾をくぐり抜けて這入る。そして大概は庄造の布団の側で眠るけれども、寒くなれば布団の上へ乗るようになり、しまいには枕の方から、蚊帳をくぐるのと同じ要領で夜具の隙間へもぐり込んで来ると云う。そんな風だから、この猫にだけは夫婦の秘密を見られてしまっているのである。
それでも彼女は、今更猫好きの看板を外して嫌いになり出すキッカケがないのと、「相手はたかが猫だから」と云う己惚れに引き擦られて、腹の虫を押さえて来たのであった。