Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
「リリーや、お前きょうからわての猫になったんやで。もう何処へも行ったらあかんねんで。」
と、そう云ってそこに立ち塞がると、又仕方なくバサリ、バサリと歩き廻って、今度は北側の窓際へ行き、恰好な所に置いてあった小裂箱の上に上って、背伸びをしながらガラス障子の外を眺めた。
九月も昨日でおしまいになって、もうほんとうの秋らしく晴れた朝であったが、少し寒いくらいの風が立って、裏の空地に聳えている五六本のポプラーの葉が白くチラチラ顫えている向うに、摩耶山と六甲の頂が見える。人家がもっと建て込んでいる蘆屋の二階の景色とは、大分様子が違うのだけれども、リリーはいったいどんな気持で見ているのだろうか。品子は図らずも、よくこの猫と二人きりで置き去りにされたことがあったのを思い出した。庄造も、母親も、今津へ出かけたきり帰らないので、一人ぼっちでお茶漬を掻っ込んでいると、その音を聞いてリリーが寄って来る。ああ、そうだった、御飯をやるのを忘れていたが、お腹が減っているのだろうと、さすがに可哀そうになって、残飯の上に出し雑魚を載せてやると、贅沢な食事に馴れているせいか嬉しそうな顔もしないで、ほんの申訳ぐらいしか食べないものだから、つい腹が立って、折角の愛情も消し飛んでしまう。