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Japanische Klassiker mit Furigana

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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme

Aozora Bunko

それで俄かに気を許したことが悪かったのだが、お午の御飯に、今日はゆっくり食べようと思って、三十分ほど階下へ降りている時だった、二階で何か、ガサッと云う音がしたようなので、急いで上って来てみると、襖が五寸ほど開いている。多分リリーは、そこから廊下へ出て、南側の、六畳の間を通り抜けて、折悪く開け放しになっていたそこの窓から屋根へ飛び出したのであろう、もうその辺には影も形も見えなかった。

「リリーや、………」

彼女はさすがに大きな声で喚こうとして、ついその声が出ずにしまった。あんなに辛苦したかいもなく、やっぱり逃げられたかと思うと、もう追いかける気力もなく、何だかホッとして、荷が下りたような工合であった。どうせ自分は動物を馴らすのが下手なのだから、晩かれ早かれ逃げられるにきまっているものなら、早く片がついた方がいいかも知れない。これで却ってサバサバして、今日からは仕事も捗るであろうし、夜ものんびり寝られるであろう。それでも彼女は、裏の空地へ出て行って、雑草の中を彼方此方掻き分けながら、

「リリーや、リリーや」

と、暫く呼んでみたけれども、今頃こんな所に愚図々々している筈がないことは、分りきっていたのであった。