Japanische Klassiker mit Furigana
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さる
猿
宮本 百合子
Lesen Sie 猿 (さる) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.437 Zeichen · 11 Bildschirme
――大丈夫だよ。
エッダ ……(糸車の音が、四辺(あたり)に響く)だってもね、阿母さん。ヨハンはきっとどうかしていてよ、私が、ちゃんとこの胸で感じるんだもの。
母親 (笑い)お前の胸かえ? 要心おしよ、小さい娘っ子の胸と――
エッダ (強く)厭なの! そうじゃないさ。ヨハンは、死んだあの子のお父さんやお母さんを、このごろ頻りに思い出しているって云うのよ。
母親 (しんみりと)そうかえ? そんな風かえ?――可愛そうにね。……然し、思い出すに種もなかろうよ。何しろ、生れてたった五十日目に、死なれてしまったんだもの。
エッダ それあ、あの子は自分で何も覚えてはいないわ。でも、他人が云うんだもの――ヨハンが、自分が孤児(みなしご)で、阿母さん阿父さんがほんとの親でないのを知ったのだって、ハンスの婆さんに聞いたからよ。――(声を潜め)あの子の阿父さんが、狂って死んだってほんと? 阿母さんを捕まえて、泣いて逃げるのを、むりやり河へ突陥(つっぱ)めたって……ほんと?
母親 (身震いをし)止めておくれ。厭な話だ。――けれどもほんとはほんとだよ。阿父さんも、阿母んも、私達二人の若い時っからの友達で、一緒に踊ったり、氷の上を滑ったり……。