Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Lesen Sie 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.583 Zeichen · 240 Bildschirme
小机一つひかえていても、室の空気というか、床というか、人々の気配で揉まれていて、そこにいることは疲れます。
暖くなって来たし、光線の工合もいいので、同じ二階ながら、北向きの長四帖に机と椅子と紫檀の飾棚だけをもちこんで、きょうは部屋つくりいたしました。
この、よく働いた大テーブルに向って物を書くのは、もう三四年ぶりです、十六年の十二月九日以来よ。病気あがりの時は体の力がとぼしくて、こんな大きい机にとりつく元気がなかったし、去年の四月以来は、家政婦暮しで寸暇なく、やっとこの頃すこし自分のひまが出来はじめ、体も丈夫さが増して来て、この机がうれしくなつかしくなって来たわけです。
この頃は、実に早寝です、十時までには床につきます。そのためか、よほど疲れが直り、又いくらか平穏なので、大助り。この北の小部屋は、短い手すりのついた(あなたが、夏、長椅子代りになさったような)はり出しがついていていきなり外が眺められます。腰かけて勉強するには、こういう工合が室の方がいいこころもちです。青い小さい柿の芽、紅い楓の芽、古びたタンク、そして垣根越しに隣りの庭の柔かい楓の芽立ち、乙女椿、常盤樹が見え、雨戸のしまった大きい家の一部が見えます。