Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Lesen Sie 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 374.755 Zeichen · 745 Bildschirme
としました。同じ杉垣の家ながら、なかでの生きる心持は時代により人によりちがいます、その意味で。慎一という男、妻は峯子、照子という女の子一人。小さい勤め人。今日の生活の不安な感情。しかし、いろいろに時代的に動こうとは思わない。妻も、よく理屈は云えないが、其の心持でいる。夏、西の方に一間の窓がひらいていて、そこから消防の物見など見える家。夜、峯子がふと目がさめる。しゅりゅん、しゅりゅんという、いかにも的確な迅い鉄のバネの音をきく。良人の生々としてよく眠っている暖い肉体を自分の頬の下に感じつつ、切ない心持でそれをじっときいている。幾晩もそうして目がさめ、こうしてきいている。しかし良人にはそのことが云えない。感情が余り切実だから。表現が分らない。その音が或夜やんでいる。やんでいる。峯子は涙が出て、良人に唇をもってゆく。よく眠っている慎一は、少年ぽくむにゃむにゃで応える。峯子思わず笑う。そんな経験は慎一がいつ留守になるかもしれないという条件とともに二三年のうちに峯子の生活感情をかえた。十年計画で月三十円の月賦で、集合住宅をたてるというような友人の誘いをうけるが、峯子にはそういう生活の感情が実感にとおい。