Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうき
獄中記
大杉 栄
Lesen Sie 獄中記 (ごくちゅうき) von 大杉 栄 (おおすぎさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.988 Zeichen · 58 Bildschirme
市ヶ谷の巻
前科割り
東京監獄の未決監に「前科割り」というあだ名の老看守がいる。
被告人どもは裁判所へ呼び出されるたびに、一と馬車(この頃は自動車になったが)に乗る十二、三人ずつ一組になって、薄暗い広い廊下のあちこちに一列にならべさせられる、そしてそこで、手錠をはめられたり腰縄をかけられたりして、護送看守部長の点呼を受ける。「前科割り」の老看守は一組の被告人に普通二人ずつつくこの護送看守の一人なのだ。いつ頃からこの護送の役目についたのか、またいつ頃からこの「前科割り」のあだ名を貰ったのか、それは知らない。しかし、少なくとももう三十年くらいは、監獄の飯を食っているに違いない。年は六十にとどいたか、まだか、くらいのところだろう。
被告人どもが廊下に呼び集められた時、この老看守は自分の受持の組は勿論、十組あまりのほかの組の列までも見廻って、その受持看守から、「索引」をかりて、それとみんなの顔とを見くらべて歩く。「索引」というのは被告人の原籍、身分、罪名、人相などを書きつけたいわばまあカードだ。
「お前はどこかで見たことがあるな。」
しばらくそのせいの高い大きなからだをせかせかと小股で運ばせながら、無事に幾組かを見廻って来た老看守は、ふと僕の隣りの男の前に立ちどまった。