Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうき
獄中記
大杉 栄
Lesen Sie 獄中記 (ごくちゅうき) von 大杉 栄 (おおすぎさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.988 Zeichen · 58 Bildschirme
とんだ木賃宿
もっとも、その後一度ふとしたことからちょっと東京監獄へ行ったことがある。しかしそれは決して血気の逸りでもまた若気のあやまちでもない。現に御役人ですら「どうも相済みません」と言って謝まって帰してくれたほどだ。それは本年のことで、事情はざっとこうだ。
三月一日の晩、上野のある仲間の家で同志の小集りがあった。その帰りに、もう遅くなってとても亀戸までの電車はなし、和田の古巣の涙橋の木賃宿にでも泊って見ようかということになって、僕の家に同居していた和田、久板の二人と一緒に、三輪から日本堤をてくって行った。この和田も久板も今は初陣の新聞紙法違犯で東京監獄にはいっているが、本年の二科会に出た林倭衛の「H氏の肖像」というのはこの久板の肖像だ。
吉原の大門前を通りかかると、大勢人だかりがしてわいわい騒いでいる。一人の労働者風の男が酔っぱらって過ってある酒場の窓ガラスを毀したというので、土地の地廻りどもと巡査がその男を捕えて弁償しろの拘引するのと責めつけているのだった。
その男はみすぼらしい風態をして、よろよろよろけながらしきりに謝まっていた。僕はそれを見かねて仲へはいった。