Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうき
獄中記
大杉 栄
Lesen Sie 獄中記 (ごくちゅうき) von 大杉 栄 (おおすぎさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.988 Zeichen · 58 Bildschirme
そしてその男を五、六歩わきへ連れて行って、事情を聞いてそこに集まっているみんなに言った。
「この男は今一文も持っていない。弁償は僕がする。それで済む筈だ。一体、何か事あるごとに一々そこへ巡査を呼んで来たりするのはよくない。何でもお上にはなるべく御厄介をかけないことだ。大がいのことは、こうして、そこに居合した人間だけで片はつくんだ。」
酒場の男どももそれで承知した。地廻りどもも承知した。見物の弥次馬どもも承知した。しかしただ一人承知のできなかったのは巡査だ。
「貴様は社会主義だな。」
初めから僕に脹れっ面をしていた巡査は、いきなり僕に食ってかかった。
「そうだ、それがどうしたんだ。」
僕も巡査に食ってかかった。
「社会主義か、よし、それじゃ拘引する。一緒に来い。」
「それや面白い。どこへでも行こう。」
僕は巡査の手をふり払って、その先きに立ってすぐ眼の前の日本堤署へ飛びこんだ。当直の警部補はいきなり巡査に命じて、僕等のあとを追って来た他の二人まで一緒に留置場へ押しこんでしまった。
これが当時の新聞に「大杉栄等検挙さる」とかいう事々しい見だしで、僕等が酔っぱらって吉原へ繰りこんで、巡査が酔いどれを拘引しようとする邪魔をしたとか、その酔いどれを小脇にかかえて逃げ出したとか、いい加減な嘘っぱちをならべ立てた事件の簡単な事実