Japanische Klassiker mit Furigana
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たまつきばのいちぐう
球突場の一隅
豊島 与志雄
Lesen Sie 球突場の一隅 (たまつきばのいちぐう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.111 Zeichen · 29 Bildschirme
「ああこれは驚いた。そういつまでも覚えられていた日にはたまらないね。」
けれども村上の顔にはそういう言葉の下からちらと淋しい影がさした。
村上の占いというのはそう古い話ではない。丁度七月のはじめ梅雨も霽れようという頃であった。彼は少し入用の金が出来た。誰にも何とも云わなかったので分らないが、前後の事情から推すと、前から大分関係があった或る女とそれとなく別れるため二三日の旅をするつもりの金だろうと松井は思った。兎に角彼は少し纒まった金が入用になって、故郷広島のさる叔父に内々無心をしたのであった。暫く何の返事もなかった。彼は落ち付かない日を送った。ある晩ぶらぶら散歩していると薄暗い通りに占いの看板を見出した。変な気になって彼は遂にその晩、怪しい老人から吉の占いを得て帰った。翌朝叔父から金が届いたとのことである。
「占いをなすったことがあるんですか。」と林は初めて口を開いた。
「いや、つまらない事なんです。」と村上は答えた。
「あれで中々面白いものでしょうね。」
「さあどうですか。案外つまらないものかも知れませんよ。」
「そうですかねえ。」
それっきり一寸皆黙ってしまった。