Japanische Klassiker mit Furigana
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ことのそらね
琴のそら音
Lesen Sie 琴のそら音 (ことのそらね) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.985 Zeichen · 42 Bildschirme
としきりに狸の議論を弁護している。して見ると昨夜は全く狸に致された訳かなと、一人で愛想をつかしながら床屋を出る。
台町の吾家に着いたのは十時頃であったろう。門前に黒塗の車が待っていて、狭い格子の隙から女の笑い声が洩れる。ベルを鳴らして沓脱に這入る途端「きっと帰っていらっしゃったんだよ」と云う声がして障子がすうと明くと、露子が温かい春のような顔をして余を迎える。
「あなた来ていたのですか」
「ええ、お帰りになってから、考えたら何だか様子が変だったから、すぐ車で来て見たの、そうして昨夕の事を、みんな婆やから聞いてよ」と婆さんを見て笑い崩れる。婆さんも嬉しそうに笑う。露子の銀のような笑い声と、婆さんの真鍮のような笑い声と、余の銅のような笑い声が調和して天下の春を七円五十銭の借家に集めたほど陽気である。いかに源兵衛村の狸でもこのくらい大きな声は出せまいと思うくらいである。
気のせいかその後露子は以前よりも一層余を愛するような素振に見えた。津田君に逢った時、当夜の景況を残りなく話したらそれはいい材料だ僕の著書中に入れさせてくれろと云った。文学士津田真方著幽霊論の七二頁にK君の例として載っているのは余の事である。