Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
朦朧に閉じ去って、一針の縫目も見せず、相変らずそれは晩春の闇の夜町の遠見になります。気分が流れるということが何とわたくしをしてあたりの光景を斯くまで恍惚としたものに感ぜしめることでしょう。
昨年の十二月のクリスマスの前日、わたくしは安宅先生のヴヰラへ御歳暮を持って行き、先生の留守に出会い、遥かに雑木林の中に先生が射たれる猟銃の音を聞きました。それからわたくしは先生を尋ねて雑木林の中に入り込み、うす日の射す林間の霧に浮かされ、踏みにじませる朽葉の匂いに酔うて、わたくしはゆくりなく只今と似たような恍惚の光景にあたりを感じ得ました。しかし今から思えば、それはまだ、単調で幼稚な恍惚でした。
今夜の気分の流れには、たとえ過去や未来の悔いや苦労にはたいした正体が無いものとたかを括りながらも、さすがにわたくしも大人びて心の底の底には罪を重ね、咎を作り行く想いも免れないためでしょうか、または環境からして危機を孕み来る予感に襲われてでもいるためでしょうか、この無上の陶酔のうちに在って、わたくしは何か急立てられ、詰め寄せられている不安の感じを除きようもありません。しかし、その不安は、すでに現在のようになっているわたくしの身や心のものに取っては、吸物の汁に忍ばせる酢の一雫であり、眼隈に添える墨の一掃毛であります。