Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
鼻は峰だけ特に目立ち、頬骨の下はげっそり落ちて、濃い髭は椀の上に植え付けられたように上唇に盛り上っています。眼はどんよりしながら剥き出されています。しまは少し躪り出すと、「旦那さま、お蝶さまですよ」と言いました。
父は「うむ」と返事をしましたが、顔には脅えだけ除かれて、たゞ張り拡がったまゝ縮まない無気味に鯱張った表情だけ残されて、そのまゝこっちを向いています。しまはもう一度声をかけました。
ちょっと間を置いて、父の手から竿はぽたりと落ち、ぎごちない立て膝はきちんと坐り直され、左手を内懐へ入れたいつもの父の坐り方になりました。
「どうも、この頃はうちで酒を飲まさんで困る。酒を飲まさんじゃ――」
そう言って首を二つ三つ振りました。
しまが何か言おうとするまえに、父はにやりと笑って、
「おまえ、内密で――」
これだ/\といって左の手でコップを煽る手附をしてみます。
「困りますですね」と言ったしまは、それでもどっかへ出て行って台附コップへ赤葡萄酒を八分目ほど入れたものを運んで来ました。
父はそれを受取ると震える手で酒を零すまいとして大事そうに右の手をも持ち添えて口へ持って行きましたが、コップの縁が唇に触れると、歯にうち当てる音と共にまるで砂糖水をわたくしが飲むようにごく/\と九分通り一気に飲み乾しました。