Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme

Aozora Bunko

銃声はなか/\近付いて来ません。わたくしは、もどかしくなり、風呂敷包を玄関の踏石の上に置いて櫟林の方へ先生を捜しに行きました。

櫟林は、丘の上では果樹園や花畑の背後を囲みながら学校教職員の舎宅のある段と、学園の建物のある段と、その下の多那川べりの灌漑地帯の田畑の平地と、三段になっている地層を抱きかゝえるように多那川の岸にまで立ち続いております。

わたくしは銃声と犬の声を目宛てに林の中に僅に通っている細い径を彷徨い歩きました。

音はすぐそこに聞えたと思って行ってみると、もうあらぬ方に犬の声が聞えます。自分でおかしくなるくらい逸れます。

こうして逸れて、彷徨いながら、しかし初冬の暖い日の林の中の一人歩きは何とも言えない淋しく悲しいそしてうっとりしたなつかしみを感じさせます。葉はすっかり落ち尽して、地に厚く積み、それに霜の降りたのが程よく溶けて湿気を加えているので、踏んで行くわたくしの靴は踝ほども軟かく地に軋み込みます。よく洒された麻布が擦り合うような音の底に生絹を揉み合わすような音もかすかに聞えます。それを何の雑作もなく踏み躙り踏み躙りして行くことは、とても贅沢で勿体ない気がいたします。