Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
Lesen Sie 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.598 Zeichen · 182 Bildschirme
とりわけ細い露路の一つへ、死んでしまったのか、気絶をしているのか、されるままになっている京助の体を、ズルズルと引っ張って来た松平碩寿翁は、一軒の家の門口の前へ、その京助の体を捨て、忍びやかに露路を出ようとした。
と、その家の窓の辺りから、急に華やかな燈火が射し、高貴な若々しい男の声が、屈託もなさそうに聞こえてきた。
「問題は非常に簡単なのだよ。小慾にあり知足にあるのさ。なるほど、今は生活にくい浮世だ。戦い取ろう、搾り取ろうと、誰も彼も逆上してあせっている。だから私は云うのだよ、慾を少なくして、足るを知れと。つまり浮世と逆行するのだ。その逆行が徹底した時に、桃源郷が現じ出してくる。……誰も彼も桃源郷を求めていながら、誰も彼もが桃源郷を断っている」
するとその声に答えるようにして、あどけない娘の声がした。
「小父様ほんとうでございますわね。……でも小父様はどういうお方ですの?」
「私かね」と男の笑声が云った。
「旅人なのだよ、この人の世の。……お伽噺の語り手なのだよ。伝道者と云ってもよいかも知れない」
「妾ちっとも恐くないわ。知らないお方ではございますけど。