Japanische Klassiker mit Furigana
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でんえんのまぼろし
田園の幻
豊島 与志雄
Lesen Sie 田園の幻 (でんえんのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.053 Zeichen · 17 Bildschirme
その投網で捕った川魚類もまた、うまかった。焼き干しにしたのの甘煮なら知っているが、生のままの甘煮は初めてだった。清流とそっくりの新鮮さで、それぞれのほのかな風味があり、少し生ぐさすぎるも、濃い濁酒にはよく合う。濁酒に二種あって、麹の交ったのは冷やで飲み、布で漉したのは温めて飲むのである。
酔眼のせいかそれとも何か実物か、彼方に美しい光りが見えてきた。
高台のはじに建ってるこの隠居所の縁側からは、昼間なら、平野が一目に見渡せる。稲田、堤防、村落、そして右手に山が連る。夜のことで、燈火がほのかにさしてる庭の植込から先は、ただ闇の空間だった。その空間の彼方、恐らく堤防のあたりと覚しいところに、二つ、三つ、四つ、ぽつと光りが浮き出してきたのである。次第に殖える。十ばかりもあろうか。少しずつ動いてるようだ。私も宗吉も、いつしか口を噤んで、その方を眺めていた。
もう太鼓の音も聞えず、夜は更けてるらしかった。だがお祭りはまだ盛りであろうか、それとないどよめきが空中に感ぜられたし、奥さんも宗太郎も帰って来ず、崖の下にも人の足音はしなかった。そしてただ、闇の空間を距てた彼方、河の堤防のあたりに、ちらちらと光りが明滅してるのである。