Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いなかもの

田舎者

豊島 与志雄

Lesen Sie 田舎者 (いなかもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.181 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

その寺井さんがいま東京にいて、あの人も不幸続きで……と依田氏は言葉を濁すのである。岸本はふいに少年時の夢にめぐり逢ったような気がして、菊子さんという人がいた筈ですがと相槌をうつと、依田氏はびっくりしたように唇をつきだして、硬い口髭を逆立てたが、知っているのかと案外静かに聞くのだった。

「もう昔のことで、一二度逢ったきりですから、向うは御存じないでしょうが……。」

そして口を噤んだのだが、依田氏がその続きを待つように黙っているので、彼は云ってのけた。

「何ですか、あのひとを本当に好きで、そのことばかり考えていた時があるような気がするんです。」

云ってしまってから、彼は顔が赤くなるのを感じて、自分でもばかばかしく思ったが、それよりも、依田氏が小さい眼をじっと――それもやさしく――見据えたまま、口髭をなお一層逆立て、太い首を縮こめて、呆れたように云うのだった。

「すると、君の初恋というわけかね。」

そしてふいにばかげた哄笑がとびだしてきた。岸本は抗弁しようと思ったが、言葉が見つからなくてまごついてるうちに、依田氏の太い指先で卓上の呼鈴が鳴らされ、出て来た女中に、奥さんを呼べというのである。