Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
それと云うのが、何しろ実に意外な事が後から後からと起って来て、欺された上にも欺されていたことが分るに随い、私の神経は異常に鋭く、病的になり、いろいろな場合を想像したり臆測したりし始めるので、そうなって来るとナオミと云うものが、とても私の智慧では及ばない神変不可思議の通力を備え、又いつの間に何をしているか、ちっとも安心はならないように思われて来るのです。己はこうしてはいられない、どんな事件が留守の間に降って湧いているかも知れない。―――私は会社をそこそこにして、大急ぎで鎌倉に帰って来ました。
「やあ、只今」
と、私は門口に立っている上さんの顔を見るなり云いました。
「いますかね、内に?」
「はあ、いらっしゃるようでございますよ」
それで私はほっとしながら、
「誰か訪ねて来た者はありませんかね?」
「いいえ、どなたも」
「どうです? どんな様子ですかね?」
私は頤で離れの方をさしながら、上さんに眼くばせしました。そしてその時気が附いたのですが、ナオミの居るべきその座敷は、障子が締まって、ガラスの中は薄暗く、ひっそりとして、人気がないように見えるのでした。
「さあ、どんな御様子か、―――今日は一日じっと彼処に這入っていらっしゃいますけれど、………」