Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
「あたし、今だから云うけれど、合鍵を沢山拵えて置いたの、だから一つぐらい取られたって困りゃしないわ」
「けれども己の方が困るよ、そう度々やって来られちゃ」
「大丈夫よ、荷物さえすっかり運んでしまえば、来いと云ったって来やしないわよ」
そして彼女は、踵でクルリと身を飜して、トン、トン、トンと階段を昇って、屋根裏の部屋へ駈け込みました。………
………それから一体、何分ぐらい立ったでしょうか? 私がアトリエのソオファに靠れて、彼女が二階から降りて来るのをぼんやり待っていた間、………それは五分とは立たない程の間だったか、或は半時間、一時間ぐらいもそうしていたのか?………私にはどうもこの間の「時の長さ」と云うものがハッキリしません。私の胸にはただ今夜のナオミの姿が、或る美しい音楽を聴いた後のように、恍惚とした快感となって尾を曳いているだけでした。その音楽は非常に高い、非常に浄らかな、この世の外の聖なる境から響いて来るようなソプラノの唄です。もうそうなると情慾もなく恋愛もありません、………私の心に感じたものは、そう云うものとは凡そ最も縁の遠い漂渺とした陶酔でした。私は幾度も考えて見ましたが、今夜のナオミは、あの汚らわしい淫婦のナオミ、多くの男にヒドイ仇名を附けられている売春婦にも等しいナオミとは、全く両立し難いところの、そして