Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
が、そんなことをいうと却って彼女が肩身の狭い思いをするであろうと察して、
「ま、今年は二三日で我慢をしてお置き、来年は何処か変ったところへゆっくり連れて行って上げるから。―――ね、いいじゃないか」
「だって、たった二三日じゃあ」
「そりゃそうだけれども、泳ぎたけりゃ帰って来てから、大森の海岸で泳げばいいじゃないか」
「あんな汚い海で泳げはしないわ」
「そんな分らないことを云うもんじゃないよ、ね、いい児だからそうおし、その代り何か着物を買ってやるから。―――そう、そう、お前は洋服が欲しいと云っていたじゃないか、だから洋服を拵えて上げよう」
その「洋服」というえさに釣られて、彼女はやっと納得が行ったのでした。
鎌倉では長谷の金波楼と云う、あまり立派でない海水旅館へ泊りました。それに就いて今から思うと可笑しな話があるのです。と云うのは、私のふところにはこの半期に貰ったボーナスが大部分残っていましたから、本来ならば何も二三日滞在するのに倹約する必要はなかったのです。それに私は、彼女と始めて泊りがけの旅に出ると云うことが愉快でなりませんでしたから、なるべくならばその印象を美しいものにするために、あまりケチケチした真似はしないで、宿屋なども一流の所へ行きたいと、最初はそんな考でいました。