Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろいかや

白い蚊帳

宮本 百合子

Lesen Sie 白い蚊帳 (しろいかや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.800 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうした? どうした?」

なほ子は、頭を振って大丈夫と云う意味を示し、一寸経ってから、

「何でもない……少々過敏になっているもんだから」

と云って咳払いをした。言葉に出すのがいやでなほ子はそう云ったのであったが、本当は訳があった。総子の顔を見ているうちに、なほ子は或る夢を思い出した。それは、歯の抜け落ちる夢であった。何かしていると、上歯がみんな一時に生えている順にずり抜けた。おどろき悲しみ、手で押えるがザクザク口一杯になってどうしようもなく、その堅い歯がザクザク口一杯にひろがった時厭な、絶望的な感じが醒めて後まではっきり残った。同じ夢を一度ならず見た。なほ子は迷信家ではなかったが、今突然その心持が甦って来ると、神経の平静が保てなかったのであった。

風呂を浴び、自分の部屋へ行くと、寝台の上に新らしい白い蚊帳が吊ってあった。天井から吊るす丸い蚊帳であった。爽やかさから慰安を感じ横わったが、なほ子は容易に眠れなかった。心を張りつめる不安を追って行くと、不安は暗の裡で無限に拡り、なほ子の心を震わす程強かった。これは夢中な心配だ、夢中な心配だ。なほ子は心配で強ばりながらそう思った。