Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しろくれない

白くれない

夢野 久作

Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

と見れば切支丹秘法の魔薬にかけて伴ひ来り、有無を云はさず意に従へ、共々に快楽に耽り、やがて又、新しき女性を捕へ来れば、前なる婦人を彼の寺男、馬十に与へて弄ばさせ、遂には打殺させて山々谷々の窮隈々々に埋めさせ来りしもの。五月雨の生暖かき夜なんどは彼方の峯、此方の山峡より人魂の尾を引きて此寺の方へ漂ひ寄り来るを物ともせぬ強気者に候ひしが、妾を見てしより如何様にか思ひ定めけむ。

その翌る朝早く、父上は吾が身の行末を頼む由仰せ残されて四国へ旅立ち給ひぬとて、ひたすらに打泣く妾をいたはり止めつ。今より思へば殺し参ゐらせたらむやも計り難けれど、世知らぬ乙女心のおぞましさに其時は夢更心付き候はず。これはこれ切支丹の煙草唖妣烟なり。これを吸ひて睡り給はば、旅路を行き給ふ父上の御姿見ゆべしなぞ仮りて喫はせられし香はしき煙に酔ひて眠るともなく眠り候ひしが、その間に吾身は悲しくも和尚のものと成り果てはべり。

さる程に不思議なる哉、一度、吸ひし唖妣烟の酔ひ心地、その日より身に泌み渡りて片時も忘るゝ能はず。妾は父上の御事、鬼三郎ぬしの御事、又は明日をも計り知られぬ身の行末の事など、跡かたもなく忘れ果てゝ此寺に留まり、和尚の心のまゝに身を任せつゝ、世にも不思議なる年月を送り侍りぬ。