Japanische Klassiker mit Furigana
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しらふじ
白藤
豊島 与志雄
Lesen Sie 白藤 (しらふじ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.822 Zeichen · 16 Bildschirme
」
「うん、待ってるよ。」
美代子はじっと保治の顔を見て、それから、向うへ行ってしまいました。
追憶は、ただそれだけのものでした。
草光保治の部隊は二ヶ月ほど国内にいて、それから支那に渡り、あちこちに移動してまごついてるうちに、終戦となりました。保治は妹の手紙によって、美代子の病気が重くなったことを国内で知り、年を越して間もなく美代子が死んだことを国外で知りました。そして死は彼女のことを遠くへぼかしてしまいました。
その細川美代子が、車窓から見たあの白藤の家の背景に、いや、あの白藤の花とひそやかな住居との心像のなかに、立ち現われてきました。忘れるともなく忘れかけていたことを責めるかのように、胸の奥にひたと寄り添ってきました。
彼女が亡くなったあと、あの藤の木は二回ほど春を迎えた筈でありました。そのいずれかに、果して花をつけたでありましょうか。二回目の春の終りには、あの辺一帯は空襲により罹災して、細川の家も焼けましたので、藤の木も焼けたに違いありませんでした。
彼女の病死前後のことについては、保治の妹はくわしく知っていました。然し藤の木のことについては、一向に知りませんでした。