Japanische Klassiker mit Furigana
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しろが
白蛾
豊島 与志雄
Lesen Sie 白蛾 (しろが) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.700 Zeichen · 22 Bildschirme
時計を見ると、十一時になっていました。白い蛾はもうどこかへ行っていて見えませんでした。
岸本省平の胸のうちに、彼自身でも意外なほど、美津枝に対する愛情が燃えあがってきました。彼は彼女に逢いたくて、会社への往復に、彼女の住所の附近をぶらつきましたが、彼女の姿は更に見つかりませんでした。
そして一過間後の午後三時前に、彼は約束の五重塔のところへ行きました。曇り空の蒸し暑い日でした。然しそこに彼女は姿を見せませんでした。桜の並木の間や、墓地の銀杏の木のほとりまで、彼は何度もさまよいました。四時になっても彼女は来ませんでした。
彼は決心して、ほど近い彼女の住居を訪れました。表格子のところで、ふり仰いでみると、もう小泉美津枝という小さな表札は無くなっていて、そこだけぼんやりと白ずんでいました。
彼は格子戸を開けて、案内を乞いました。
頭を坊主刈りにして歯のかけてる老人が出て来ました。小泉美津枝のことを尋ねますと、彼女は突然、四日前に静岡へ移転したとの返事でした。岸本は呆然として佇みました。
善良そうな老人は、岸本の様子をじろじろ見調べてから、言いました。