Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろあり

白蟻

小栗 虫太郎

Lesen Sie 白蟻 (しろあり) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.099 Zeichen · 106 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし、眼には眦が鋭く切れて、それには絶えず、同じことのみ眺め考えているからであろうか、瞳のなかが泉のように澄み切っていた。事実、彼女の心のなかには、あのふしだらな単調な生活にも破壊されず、けっして倦むこともなく、絶えず一つの思念を、凝視してゆく活力があった。それが、滝人の蒼ざめた顔のなかで、不断の欲望を燃えさからせ、絶えず閃いては、あの不思議な神経を動かしていった。そのためかしら、滝人の顔には、しだいと図抜けて、眼だけが大きくなっていった。そして肉体の衰えにつれて、鼻端がいよいよ尖り出し唇が薄らいでくると、その毛虫のような逞しい眉と俟って、たださえ険相な顔が、よりいっそう物凄く見えるのだった。そのように、滝人には一つの狂的な憑着があって、その一事は、すでに五年越しの疑惑になっていた。けれども、そのために、時折危険な感動を覚えるということが、かえって今となっては、滝人の生を肯定している唯一のものになってしまった。事実、彼女はそれによって、ただ一人かけ離れた不思議な生き方をしているのだった。そして、疑惑のどこかに、わずかな陰影でもあれば、絶えずそれを捉えようとあがいていたのであるが、そのうちいつとなく、気持の上に均衡が失われてきて、今では、もう動かしがたい、心理的な病的な性質が具わってしまった。