Japanische Klassiker mit Furigana
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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
Lesen Sie 白蟻 (しろあり) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.099 Zeichen · 106 Bildschirme
そうなったら、耐え忍んで、その悩みにじっと堪えるか、それともその苦しみが私をあまり圧迫するようなら、より以上の烈しい力で、いっそ投げ捨ててしまうまでのことです。同時に、それは喜惣もですわ。ですから、そう思うと、私が時江さんに近づけないということが、あるいはさきざき幸福なのかもしれませんわね。まったく、私という女は、一つの解け難い、結び目の中にからみ込んでいるのです。ですから、悩みというものが、もしも鉄のような、神経の持主だけに背負われるものだとすれば、当然その反語として、いつか私は、それに似た者になってしまうかもしれません。いいえ、それは言葉だけの真似事ですわ。私の身体こそ、いつも病んだような、呻きを立ててはおりますけれど、心だけは貴方の幻で、そりゃ飽ちいほどに……」
そこまで云うと、滝人の語尾がすうっと凋んで、彼女は身体も心も、そのありたけを愛撫の中に投げ出した。まるで狂ったようになって、頬の瘤の面に摺りつけたり、両手で撫で擦っているうちに、爪の表まで紅くなってきて、終いにはその先から、ポタリポタリと血の滴がしたたりはじめた。そうして、その衝動がまったくおさまった頃には、陽がすっかり翳っていて、はや夕暮の霧が、峰から沼の面に降りはじめていた。