Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めをひらく

眼を開く

夢野 久作

Lesen Sie 眼を開く (めをひらく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.759 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

底の方の凍り固まった、上ッ面のフワフワしたメリケン粉のようにゆらめく雪を、村の人々が踏み固めて行った痕跡が、早くも凍りかかっている上から踏み破り踏み破り蹴散らし蹴散らし急いで行くので、狭い絶壁の上の岨道を行くのに、さほどの困難は感じなかった。それよりも一面に蔽われた深い谷底の雪の下を轟々と流れる急流の音が、冷めたい、憂鬱な夜行列車のような響を立てているのが、時々聞えて来るのには、何故ということなしに肝を冷やした。渦巻烟る吹雪に捲かれて、どこにも手がかりの無い岨道を踏み外したが最後、二度と日の目を見られないと思うと、何故とはなしに身体が縮んで、成るたけ谷に遠い側の足跡を拾い拾い急いで行った。

しかしちっとも寒くはなかった。温突の温もりが、まだ身体から抜け切れないうちに、慣れない雪道を歩いて身体が温まり初めたからであった。

時々立佇まって仰ぎ見ると、雪空は綺麗に晴れ渡って、眼も遥かな頭の上の峯々には朝日が桃色に映じていた。その峯々から蒸発する湯気が、薄い真綿のような雲になって青い青い空へ消え込んで行くのが、神々しい位、美しかった。しかしこれに反して私が辿って行く岨道は、冷たいペパミント色の薄暗に蔽われて、木の下の道なぞは月夜のように暗かった。