Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
やのしのとい
矢押の樋
山本 周五郎
Lesen Sie 矢押の樋 (やのしのとい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.468 Zeichen · 29 Bildschirme
四
……五十余歳になる当主幸兵衛は常に病気勝ちであるため、広い屋敷内に別棟の家を建て、家政は一子幸太郎に任せきりで、自分は娘の加世に身のまわりの世話をさせながら、殆ど隠居のような暮しをしていた。
来つけている屋敷で、殊に出入りの自由だった梶之助は、裏門から入って隠居所の方へ庭を横切って行った。……すると梨畠の脇のところで、向うから水手桶を提げて来た一人の娘と出会った。娘は梶之助を見るとさっと頬を染めた、そして直ぐに手桶を下へ置き、襷を外しながら、
「おいであそばせ」
と叮嚀に挨拶をした。……然し梶之助は娘の様子など気付かぬ風で、軽く目礼を返したまま大股に通過ぎて行った。
娘はそっと男の後姿を見送った。十七八であろう、どちらかと云うと小柄なひき緊った体つきで、睫毛の長い眼許に心の温かさの溢れるような表情がある、然しいま梶之助の後姿を見送る眸子には、哀れなほど悲しげな、頼りなげな光が滲出ていた。……此家の娘加世であった。
四
「ございましたか」
「有った、それも二ヵ所は慥だと思う」
前庭に赤松の林を配した簡素な住居である。主人幸兵衛は膝の上に両手を揃え、病身らしい痩せた体を前跼みにしている。