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Japanische Klassiker mit Furigana

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やのしのとい

矢押の樋

山本 周五郎

Lesen Sie 矢押の樋 (やのしのとい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.468 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

三

午後からお救い小屋を見廻りに出た、五ヵ所に設けた施粥所の他に、医療所と、家を失った窮民たちのために長屋が三棟建ててある。飢餓に迫られた幾十家族、幾百人という数が、老人も幼児も、男も女も、みんな憔忰し切って、生きた顔色もなくがつがつと粥を啜り、施薬を受けていた。

――もう暫くの辛抱だ、我慢して呉れ。

――もう直ぐ大坂から米が来る、そうしたら存分に喰べられるぞ、辛抱して呉れ。

彼は祈るような気持で心にそう呟きながら見廻って行った。

三

その翌朝であった。

例の如く早出仕で、城中内濠の土堤まで来た重太夫は、昨日と同じ場所に、同じ衣服大小が、まるで嘲弄するように脱捨ててあるのをみつけた。……供の者があっと云うのを、重太夫は静かに制して、

「ちょっと此処に待っておれ、誰かまいったら気付かれぬように取繕って置くのだ」

そう命ずると共に土堤へ登って行った。

水際の石垣の上に、下帯ひとつの裸で、昨日の若者が立っていた。二十五歳の健康な体を、斜に射しつける朝の日光に惜気もなく曝したまま、頻りに紙片を小さく千切っては濠の水面へ振撒いている、……さっきからやっているものとみえて、風に飛ばされた紙片は、まるで落花の流れ漂う如く、かなり広い範囲の水面に散らばっていた。