Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちぶきこう
知々夫紀行
幸田 露伴
Lesen Sie 知々夫紀行 (ちちぶきこう) von 幸田 露伴 (こうだろはん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.784 Zeichen · 31 Bildschirme
折柄川向の磧には、さしかけ小屋して二、三十人ばかりの男打集い、浅瀬の流れを柵して塞き、大きなる簗をつくらんとてそれそれに働けるが、多くは赤はだかにて走り廻れる、見る眼いとおかし。ここに※(「田+比」、第3水準1-86-44)奈耶迦天を祀れるは地の名に因みてしたるにやあらんなど思いつづくるにつけて、竹屋の渡しより待乳山あたりのありさま眼に浮び、同じ川のほとりなり、同じ神の祠なれど、此処と彼処とのおもむきの違えば違うものよなど想いくらべて、そぞろに時を移せしが、寒月子の図も成りたれば、いざとて立ち出ず。
末野を過ぐる頃より平地ようやく窄り、左右の山々近く道に逼らんとす。やがて矢那瀬というに至れば、はや秩父の郡なり。川中にいと大なる岩の色丹く見ゆるがあり。中凹みていささか水を湛う。土地の人これを重忠の鬢水と名づけて、旱つづきたる時こを汲み乾せば必ず雨ふるよしにいい伝う。また二つ岩とて大なる岩の川中に横たわれるあり。字滝の上というところにかかれる折しも、真昼近き日の光り烈しく熱さ堪えがたければ、清水を尋ねて辛くも道の右の巌陰に石井を得たり。さし当りては鬢水よりもこれこそ嬉しけれと、汲みて喉を潤おしつ、この井に名ありやと問えばなしという。