Japanische Klassiker mit Furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Lesen Sie 石狩川 (いしかりがわ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 253.535 Zeichen · 506 Bildschirme
「おぬし、夷人だぞ、相手は夷人のうちの赤夷、ちくしょう」
うん――と、刀を船底につき立て彼はぬッと立ちはだかった。ぐらりと傾いだ船を踏みつけるようにして、ひょう茫と涯しないくらやみの海を、ひろがった河口の先にしげしげと見入るのであった。彼は、ぶるッと身ぶるいをした。顔は海に向ったまま、声は船のなかのものにむけて、漠然と、しかし噛みつくように、問いかけたのである。
「毛唐を知っとるか、おぬしら!」
そのとき彼の身内からは、憎悪とも厭悪ともつかぬ悪臭が噴きだしたような気がした。生理的な不快さが、さか立った毛穴からむんむんと放出しているのだ。痙攣をおこし、嘔吐をもよおすほどの、理解し合う何ものもない、――生れおちるとからの敵どうしであった感情。瞼をいたくする緋ラシャの洋服を着て、雲つくような獣に似た姿をのっそりあらわして来る。そいつを視野のなかに押しこめ、見おろそうとする彼の呼吸づかいは荒くなった。
船はかすかに揺れていた。阿賀妻はそのままの恰好でうすく瞼をあけたが、すぐにまた、いかにも物倦げにしわりとそれを閉じた。
暗がりのため、そんなことは堀大主典の目にはとまらなかっただろう。