Japanische Klassiker mit Furigana
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かぐらざか
神楽坂
矢田 津世子
Lesen Sie 神楽坂 (かぐらざか) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.611 Zeichen · 40 Bildschirme
爺さんがいつまでものんべんだらりとしていて話をはこぼうとはしないので、お初は階下で気をもんでいるおっ母さんの姿に急かれるような気がしていらいらしてくる。そのくせ、爺さんの顔をみていると妙に言い出せない。こんな日がくりかえされて、おっ母さんの気嫌が悪くなる。
「何んて口下手な娘だろう」
と、愛想をつかして「その内、爺さんがどっかから内儀さんに向きなのを探してくるこったろうよ」
などと厭味を云うのである。
「そんなにお爺ちゃんのことが気になるならおっ母さんがお内儀さんになればいいじゃないの」
こう云ってお初は耳根を真っ赤にして、袂を絞りながら二階へ駆け上っていく。
「まあ、何んてことをいうの。この娘は……」
おっ母さんは銅壺の廻りを拭き止めて、呆れたように梯子段を見あげている。やがく俯向いて銅壺のあたりをゆるゆると拭いていたが、人差指に巻きつけていた浅黄の茶布巾を猫板の上へおいて、襦袢の袖口をひき出して徐かに眼を拭いた。
お初ひとりを楽しみにこれまで苦労をしのんできたおっ母さんには、これからの好い目」が当然のことのように思われているのに、お初は一向にこの心を汲まずおっ母さんの仕合せなぞどうでもいい、と思うている。