Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
対に立ててある雪洞の灯が、蒔絵の脇息を照らしている。それに悠然と倚っている、葵ご紋の武士の顔は、昆虫館主人と非常に似ている。広い額、窪んだ眼窩、きわめて高い高尚な鼻、しかし異ったところもある。昆虫館主人は白髪だのに、こっちは艶々しい黒色である。昆虫館主人の眼と来ては、霊智そのもののような眼であったが、こっちの眼は意志的英雄的である。昆虫館主人よりも身長が高く、そうして一層肥えてもいる。健康そのもののような体格である。昆虫館主人は学究として、あくまでも真面目、あくまでも真剣、しかるにこっち葵ご紋の武士は、洒々落々としたところがあり、人を食ったようなところがある。
だがいったい葵ご紋の武士は、何んという姓名を持っているのだろう? 世間の人達は敬称して、隅田のご前と云っている。葵の紋服を着ている以上、将軍家の連枝には相違あるまい。
隅田のご前を前に置き、端然と坐っている桔梗様と来ては、清浄で、美しくて、自由で無邪気で、いかにもいかにも処女というものを、掬い固めたような俤がある。
この二人の対照は、全く一幅の絵と云っていい。
まだ二人は黙っている。
と、どこから来たものか、四方雨戸をとざしてあるのに、一匹の火捕り虫が飛んで来た。