Japanische Klassiker mit Furigana
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しんけい
神経
織田 作之助
Lesen Sie 神経 (しんけい) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.754 Zeichen · 28 Bildschirme
京阪電車のヘッドライトが眼の前を走って行った。その時、階段を上って来る跫音が聴えた。
「おおけに、お待っ遠さんどした。カオルはんどす」
という声に振り向くと、色の蒼白い小柄な妓が急いで階段を上って来たのであろう、ハアハア息を弾ませて、中腰のまま、
「おおけに……」
と頭を下げた。すえたような安白粉の匂いがプンとした。
「まア、廊下イ出とういやしたんだか。寒おっせ。はよ閉めて、おはいりやすな」
そして、「――ほな、ごゆっくり……」と遣手が下へ降りると、妓はぼそんと廊下へ来て私の傍へ並んで立つと、袂の中から飴玉を一つ取り出して、黙って私の掌へのせた。
「なんだ、これ。――ああ飴か」
「昼間京極で買うたんどっせ」
「京極へ活動見に行ったの?」
「ううん」
と、細い首を振って、
「飴買いに行ったんどっせ」
「飴買いに……? 飴だけ買うたの? あはは……」
ふっと安心できる風情だった。放蕩の悔恨は消え、幼な心に温まって、私はその飴玉を口に入れた。紫蘇の味がした。
「おや、こりゃ紫蘇入りだね」
「美味おっしゃろ?」
妓はすり寄って来た。私はいきなり抱き寄せて、妓の口へ飴を移した。