Japanische Klassiker mit Furigana
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しんろのまき
神鷺之巻
泉 鏡花
Lesen Sie 神鷺之巻 (しんろのまき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.672 Zeichen · 54 Bildschirme
居ますわ。」
バタリと口に啣えた櫛が落ちた。お誓は帯のむすびめをうしろに取って、細い腰をしめさまに、その引掛けを手繰っていたが、
「玉虫でしょう、綺麗な。ええ、人間は、女は浅間しい。すぐに死なないと思いましたら、簪も衣ものも欲いんです。この場所ですから、姫神様が下さるんだと思いましてさ、ちょっと、櫛でおさえました。ツイとそれて、取損って、見えませんわ。そちらに居ません? 玉虫でしょう。」
筐の簪、箪笥の衣、薙刀で割く腹より、小県はこの時、涙ぐんだ。
いや、懸念に堪えない。
「玉虫どころか……」
名は知るまいと思うばかり、その説明の暇もない。
「大変な毒虫だよ。――支度はいいね、お誓さん、お堂の下へおりて下さい。さあ……その櫛……指を、唇へ触りはしまいね。」
「櫛は峰の方を啣えました。でも、指はあの、鬢の毛を撫でつけます時、水がなかったもんですから、つい……いいえ、毒にあたれば、神様のおぼしめしです。こんな身体を、構わんですわ。」
ちょっとなまって、甘えるような口ぶりが、なお、きっぱりと断念がよく聞えた。いやが上に、それも可哀で、その、いじらしさ。
「帯にも、袖にも、どこにも、居ないかね。