Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
Lesen Sie 私の履歴書 (わたしのりれきしょ) von 井上 貞治郎 (いのうえていじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.380 Zeichen · 69 Bildschirme
お雪は気のやさしい従順な女だったが、私はちょうど石炭屋に見切りをつけたころで、一時身をかくす必要もあって二人でかけ落ちして京都へ出た。当時のことばでいう「自由結婚」である。
京都へ出たお雪と私とは出町のかなり大きな家を安い家賃で借りた。なにか不吉なことがあったとかで、借り手がつかず、そんなことから安かったのである。もちろん私たちはそれを承知で借りたわけだ。お雪はここで大学生相手の下宿をはじめ、私は私で近郊の牧場にむぎぬかとか、ふすまを納めるまぐさ屋を開業した。この下宿屋にいて、私の持って帰る牛乳と生卵ばかり食わされていた帝大生の一人に、菊池龜三郎という独法科の学生がいた。のちに日本銀行で重要な地位につかれたとの話もきいたが、この牛乳と卵攻めにはずいぶん閉口されたことだろう。お雪はそれをいつも気の毒がっていた。こうして共かせぎを続けたが、どうも下宿屋は思わしくない。大きな家も持てあましてきたので、西洞院七条下ル堀川の小さな家へ移った。ここで細々とまぐさ屋を続けたが世帯は苦しく、私は気息えんえんの有様である。ちょうど明治三十七年、日本がロシアに宣戦を布告した年で、日露戦争の歌が町に流れる戦時気分のみなぎった時代であった。