Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
Lesen Sie 私の履歴書 (わたしのりれきしょ) von 井上 貞治郎 (いのうえていじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.380 Zeichen · 69 Bildschirme
『満州へいくんだぁ……』
『しっかりやってこいやあ……』
われもわれもと手を振って別れを惜しんでくれる。夜になって陰気な三等船室に帰って、ひざをかかえながら考えた。一枚の紹介状もなく、もちろん知人もいない。金は仁川までの切符で全くなくなった。船が進むにつれて気は滅入るばかりである。
私はふと隣りの話声に気がついた。十七、八のきれいな娘をつれた五十格好の婦人が、私同様眠れぬのか、娘とぼそぼそ話をしている。私もきっかけを見つけて話に加わった。聞けば婦人の夫が仁川にいるとか。私の心にはぽっと小さいがあたたかい灯がともったような気がした。無一文で知るべもない私は、この機会をのがしてはならないのだ。自分の境遇を納得してもらえるように、しかも多少の同情を引くように打ちあけ、結局上陸したら彼女たちの家へ泊めてもらえる口約束を得たのである。ほっとした私は、初めて足をゆっくり伸ばし、ぐっすりと寝込んだ。日本海海戦で沈んだロシアの軍艦、ワリヤーク、コレーツがその残がいをさらす月尾島をすぎると仁川の港である。波止場には白い服、黒い高い帽子をきた朝鮮人たちが、長ぎせるをくわえてのんびりと座っている。